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2020/6/16

個人事業主が棚卸資産をプライベートで使用した(家事消費)とき
あるいは、
法人の役員等が商品や製品などの棚卸資産をタダでもらった又は著しく低い価格で買ったときは、

収入とみなされて所得税がかかり、
譲渡(売買)とみなされて消費税もかかる。

こういうのを『みなし課税』という。

でも、
『みなし課税』される金額の基準が
所得税と消費税で異なるのだ。

   

   

●所得税と消費税の違い

   

個人事業主の自家消費や、法人がその役員に贈与した場合は
基本的には、所得税でも消費税でも、
その資産の時価により課税するのが原則です。

しかしながら、商品や製品などの棚卸資産については、それぞれ特例があります。

≪所得税≫
所得税では、個人事業主が棚卸資産を家事消費した場合
次のいずれか高い金額を収入に計上します。

・その棚卸資産の原価
・その棚卸資産の通常販売価格×70%

また、法人が役員・従業員に対して値引き販売するときも、
上記のいずれか高い金額でかつ合理的な値引き率で販売すれば、追加で所得税は発生しません。

つまり所得税は70%が基準となっています。

   

≪消費税≫
一方、消費税はというと、
個人事業主が棚卸資産を家事消費した場合や役員等へ贈与した場合には、
次のいずれか高い金額を課税標準とします。

・その棚卸資産の原価(課税仕入れにかかる支払対価の額)
・その棚卸資産の通常販売価格×50%

というわけで、消費税は50%が基準となっているのです。

  

  

●どちらに合わせるのか?合わせなくてもいいのか?

   

その棚卸資産の原価が50%以下ならば、
所得税の「通常販売価格×70%」が一番金額が高くなります。

高いほうに合わせていれば問題はありません。
(消費税の50%に合わせてしまうと、差額は所得税が課税されることになります)

しかし、所得税と消費税は別々の法律であり、税金もそれぞれで計算しますので
必ずしも合わせる必要はありません。

棚卸資産の原価が50%以下ならば、
所得税を計算するときは通常販売価格×70%を使い、
消費税を計算するときは通常販売価格×50%を使う、ということもできます。
(手間はかかりますが・・・)

   

   

●なぜこんなことになってるのか

   

なぜ、所得税は70%で、消費税は50%なのでしょうか。

・・・ええと、明確な理由は知りません。すみません。。

(ご存知の方がいたら教えてください)

    

ここからは個人的な意見ですけれども、、、

消費税は、国内において事業者が事業として対価を得て行われる取引に課税されます。
この「対価を得て行われる」とは、資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供に対して反対給付を受け取ることをいいます。

単なる贈与や寄附金であれば、
原則として対価を得て行われる取引に当たりませんので、
課税の対象になりません。

 参考:国税庁 タックスアンサー 「対価を得て行われる」の意義

個人事業主の家事消費や、法人が自社製品などをその役員に贈与した場合には、
実際にお金の受取はありませんので、対価を得て行われてはいません。
しかし対価がないのは、内輪(社内)の取引であるからこそであり、
単なる贈与とは異なります。

そこで消費税は、個人事業主や役員からお金を受取ってないけど
お金を受取った(=対価を得て行われた)ものとみなしているのです。

つまり、お金を受取った(対価を得て行われた)のはいくらかという点を基準にして、そのみなす金額を、

譲渡(100%)と贈与(0%)の間の50%とした。

   

所得税は、個人の収入に負担を求める税金であるため、
個人の収入がいくらあったかという点を基準にして
みなす金額を70%とした。

こういった違いから、70と50の差が生まれたのではないかと想像します。

  

  

***

わたしが最初に勉強した税法は、消費税です。

なので、消費税を勉強していた当時は、
「みなし課税は50%で計算すればOK!」だと思い込んでいました。

その思い込みは、
「消費税はそうだけど、所得税は違うからね」と勤め先の所長にやんわり訂正していただきました。

同じ取引なのに、税法ごとに売上とみなす金額が違うなんてびっくりでしたね。

世の中は複雑なんだなあ。

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