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2020/3/4

仕入や販管費で支払った消費税を計算する方法については、
みなし税率による簡便計算法式の『簡易課税』制度がある。

この制度が使えるのは、
基準期間における課税売上高が5000万円以下の事業者に限られており、
使う場合には事前に届出が必要だ。

多くの場合、
高額な固定資産などの購入が無ければ、
『簡易課税』で計算したほうが、
納付する消費税が減ることが多い。

つまり簡易課税を選択したほうが有利なことが多かった。

しかしながら、
2019年10月より消費税率が8%と10%の複数税率となったことで、
軽減税率対象のものを売る業種については
簡易課税を選択しても以前より有利となることがなく、
場合によっては不利となるケースも増えてしまった。

●売上は8%でも、仕入や販管費は10%もある

先程も書いたように、

”大きな固定資産などの購入が無ければ、
『簡易課税』で計算したほうが、
納付する消費税が減ることが多い。”

だったのです。軽減税率導入前は。

その理由は、
みなし仕入率がやや多めに設定されていることと、
これまで税率が一律だったこと。

    

簡易課税で計算方法は、

売上の消費税-(売上の消費税×みなし税率)=納付する消費税額

というふうになっており、

仕入や販管費の消費税については、
”(売上の消費税×みなし仕入率)” の部分で概算で計算します。

ようは、売上の数字しか使わない、ということなのです。

    

売上が軽減税率対象品目である業種は、
預かる消費税はこれまでと変わらず8%です。

しかし販管費部分についてはほとんど消費税10%であることから、
支払う消費税はこれまでより増えました。

よって売上の数字しか使わない簡易課税を選択しても以前より有利となることがなく、
場合によっては不利となるケースも増えてしまったのです。

(計算が簡単、という利点は変わりませんけども)

    

●期間限定で手当されている業種もある

    

簡易課税のみなし仕入率は、以下のように決まっています。

  • 第一種事業(卸売業)90%
  • 第二種事業(小売業)80%
  • 第三種事業(製造業等)70%
  • 第四種事業(その他の事業)60%
  • 第五種事業(サービス業等)50%
  • 第六種事業(不動産業)40%

このうち、
第三種事業である農業、林業、漁業で
消費税の軽減税率が適用される飲食品の譲渡を行う事業については、
本来みなし仕入率が70%のところを、80%として計算できます。

ただし2019年(令和元年)10月1日を含む課税期間に限定されています。

    

●悩ましいのは食品製造業

     

食品製造業については、農業、林業、漁業のような手当は何もされていません。

食品製造業のみなし仕入率は70%です。

ちなみに、製造業には製造小売業も含まれますので、
まちのパン屋さんやケーキ屋さんなども、
持ち帰り販売分については、みなし仕入率70%となります。

   

売上100%に対して、
仕入原価率40%として、ケース別に具体例をみていきましょう。

   

※一般課税とは、簡易課税制度を利用しない、原則の計算方法です。


≪ケース1≫
食品売上 2000万(消費税8%)
食品の材料仕入 800万(消費税8%)
販管費のうち消費税課税分 600万(消費税10%)

■簡易課税で計算した場合の納付税額

2000万×8%-(2000万×8%×70%)=48万円

■一般課税で計算した場合の納付税額

2000万×8%-(800万×8%+600万×10%)=36万円

∴一般課税有利、簡易課税不利

≪ケース2≫
食品売上 2000万(消費税8%)
食品の材料仕入 800万(消費税8%)
販管費のうち消費税課税分 400万(消費税10%)

■簡易課税で計算した場合の納付税額

2000万×8%-(2000万×8%×70%)=48万円

■一般課税で計算した場合の納付税額

2000万×8%-(800万×8%+400万×10%)=56万円

∴簡易課税有利、一般課税不利


    

ケース1では、
材料仕入+販管費=1400万であるため、売上2000万の70%で、みなし仕入率と同じ割合です。

みなし仕入率と同じ割合 なら、消費税が一律8%のときは、
簡易課税でも一般課税でも納付税額は同じでした。

しかし、販管費の税率だけ10%になったので、
簡易課税の方が不利となってしまったのです。

ケース2では、材料仕入+販管費=1200万であるため、売上2000万の60%です。みなし仕入率より 材料仕入+販管費 の割合が低いため、簡易課税でも有利となります。

      

当然ながら
売上に対する仕入・販管費の割合は
事業者ごとに異なります。

製造業は、売上に対する販管費の割合が卸小売業より多いので
影響を受けやすいです。

もちろん、食品製造業に限らず、
軽減税率対象品目を販売する事業者については、
簡易課税の選択をするかどうかを今まで以上に検討することが必要になります。

    

***

簡易課税を選択できる事業者であれば、
選択したほうが圧倒的に有利になることがこれまでは多かったのです。

今回、食品製造業に焦点をあてましたが、
飲食店はこの逆で、
売上が10%、仕入材料が8%なので
簡易課税の方がより一層有利となったといえます。

ということは、、、
イートインとテイクアウトの両方ができる食品製造業なら
バランスが取れるのかも?

とちょっと思いましたけど、
これもイートインとテイクアウトの割合によりますね。

実際の数字を見ていると、
複数税率の影響を想定外に大きく感じます。

(申告書も枚数多すぎですしね)

***

   

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