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2025/5/10
(注)ネタバレも少し含んでいるかもしれません
■JA共済の闇を描いた『対馬の海に沈む』
窪田新之助さんの『対馬の海に沈む』を読みました。
職業柄、”建更(たてこう)”の控除証明書は何度か見たことがある。
”建更”とは「建物更生共済」のこと。
JA共済が販売している火災保険のようなもので、
火災や自然災害などの損害を保障する共済契約である。
普通の火災保険と違い、完全な「掛け捨て」ではなく積立部分もある点が特徴だ。
『対馬の海に沈む』は、
この「建物更生共済」を不正利用して起きた、JA対馬の22億円超の横領事件についてのノンフィクション小説です。
■不正のトライアングル
不正のトライアングルとは、
人が不正行為を働くときに共通して存在するとされる3つの要因(動機・機会・正当性)を示した理論をいう。
これをJA対馬の事件に当てはめてみると、
- 動機:ノルマ達成の業績プレッシャー
- 機会:組織のゆるい管理体制や監査
- 正当性:誰も損をしていない
といったところだろうか。
正当性について補足すると、
実際には西山氏を止めようとした上司や、西山軍団に入らなかった職員は被害を受けている。
しかしながら、
西山氏の”仲間”になった職員は、西山氏から実績を分けてもらい厳しいノルマに苦しむことがなかった。
西山氏の営業成績が全国トップレベルとなれば、当然西山氏の上司の手柄にもなった。
そして西山氏を介して契約した共済の契約者たちは、台風で少し被害を受ければ多額の保険金を手にすることができたのだ。
みんな甘い汁を吸っていたというわけである。
■どうしても倒せない敵がいたら
本書を読んで、やはり一番の事件の要因はJA共済の過大なノルマだと感じた。
組織なら不正が起こらないような管理体制を築くべきだ。
けれども、職員共通の”敵”あるいは”地獄”があったのなら、
形式上の管理では意味をなさないのだろうな、、、と。
職員が課せられるノルマはあまりに大きく、普通に営業するだけではこなせない。とはいえ達成できそうになければ、有形無形のさまざまな手段をもって、上司が心身ともに追い詰めてくる。 そこで職員が仕方なしにやらざるを得ないのが、自身や家族を必要以上の共済に入らせる自爆営業だ。時には友人や知人にも共済を契約してもらい、その掛け金までも肩代わりする羽目になる。
(窪田新之助. 対馬の海に沈む (集英社学芸単行本) (p.121). 株式会社 集英社. Kindle 版.)
JA共済のなかで神様と呼ばれたトップセールスマンは、怪物になってしまった。
どうしても倒せない敵が出てきたら、誰かが怪物にならないと世界は救えない。
誰かが怪物になってくれれば、ほかは人間のままでいられる。
一線を越えた奴だけが、神であり、ヒーローであり、怪物になれるのだ。
これがジャンプ漫画なのだ。
(個人の偏見です)
西山氏は『ONE PIECE』に夢中だったらしいが、
私は『呪術回線』29巻で乙骨先輩の言っていたセリフを思い出した。
「五条先生がいなくなったら 誰かが怪物に ならなきゃいけないんだ!!」
敵さえいなければ誰も怪物にならなくて済むのに、、、
***
≪あとがき≫
本書のここかしこに鈴木(仮名)という人物が出てきます。
筆者が「複数の観点から十分信頼に値するものであると判断した」と述べたその証言は、西山氏の手口に関して非常に詳細で。
私はこの人物が一番怖いと思いました。
それと、かつてのトップセールスレディである女王が最後にバーンっと出てくるかと勝手に期待していたけれどそんなことはなかったです。
≪さいきんのあたらしいこと≫
紫蘇のプランター栽培(まだ枯れてない!)
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