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2020/4/14

夫婦の一方が個人事業主の場合や、
夫婦の両方が個人事業主である場合に注意しないといけないことがある。

それは、
税金計算の上では、
夫婦間の売上は成立しない、ということだ。

なぜなら、
これを許してしまうと、
家族に所得を分担して税金逃れをしようとするケースが出てくるからである。

たとえば、夫がデザイン業で、妻が税理士業をしていたとする。

・夫から妻に、確定申告書の作成を依頼し、10万円払った。

・妻から夫に、事務所ホームページの作成を依頼し、15万円払った。

この場合、いずれも金銭のやり取りは無かったものとみなされてしまうのだ。

     

これは、所得税法56条に規定されている。


居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が
その居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により
当該事業から対価の支払を受ける場合には、
その対価に相当する金額は

その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、
必要経費に算入しないものとし、
かつ、
その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、
その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、
必要経費に算入する。

(※算入する必要経費については独特の取り扱いとなるので、次回書きます)

    

条文の中に”生計を一にする”という文言がある。

今回、これに着目して考えてみると、

生計が別ならば、夫婦間の売上は成立するのか?

という疑問が浮かぶ。

仕事の依頼はするが、
夫婦関係は冷めきっているとか・・・

   

  
●一緒に住んでいる夫婦が別生計だと言い張るのは難しい

    

夫婦それぞれが、それなりに稼いでいる場合で、
お互いの収入に頼ることなく生活できても、
一緒に住んでいる限りは
”生計を一にする”と考えられます。

それでは”生計を一にする”について、国税庁の説明を見てみましょう。

日常の生活の資を共にすることをいいます。
会社員、公務員などが勤務の都合により家族と別居している又は親族が修学、療養などのために別居している場合でも、
(1)生活費、学資金又は療養費などを常に送金しているときや、
(2)日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には他の親族のもとで起居を共にしているときは、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

”生計を一にする”かどうかでよく言われるのは、
「財布が一緒かどうか」ということです。

しかし過去の判例で、
食事代や水光熱費、住居代等の負担区分をはっきりと分けていた夫婦においても、
最終的に夫婦間の売上は認められませんでした。

なので、家庭内別居程度では、生計が別になっているとは言えないでしょう。

    

●別居なら少しは可能性あり?

   

これは検討の価値があります。

別居して、それぞれ自分で生活費をまかなう場合です。

生計を一にする”とは、「日常の生活の資を共にする」ことでした。

ということは、
日常生活が全く別で、かつ
生活費、学資金又は療養費などを負担しあうことがなければ
”生計を一にする”とは言えないのではないでしょうか?

この場合は、別生計として、
夫婦間でも売上が成立する可能性があるのではと考えられます。

     

●どちらかというと必要経費の話です

というわけで、別居でもしない限りはまず、夫婦間の売上は

税金計算上成立しません。   

しかし、”売上”という表現を使ってきましたけれども

どちらかというと売上の話ではなく必要経費の話です。

必要経費が多くなると利益が減って、税金が減りますので、
配偶者に支払う金額を多くして必要経費が多くならないように、
ということなんです。

(個人事業主が配偶者に支払う金額のうち、必要経費として認められているのは、基本、専従者給与だけです)

    

ただし、夫婦間で仕事を依頼したとき、
相手方の売上金額は、そのまま自分の必要経費になりませんが、
その仕事で相手方の使った経費が自分の必要経費になります。
これだけだと「???」なので、また次回。

   
***

ご夫婦がそれぞれ士業をしている場合は特に注意が必要ですね。
我が家は違いますが。

コロナの影響により在宅ワークが多くの会社で進んだおかげで、
夫婦一緒の時間が増え、
夫婦喧嘩が増え・・・
なんてこともあるようです。

我が家は違いますが。(いまのところ)

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