スポンサーリンク

2013年8月15日

それでは前回の続きを。

国外関連会社間での利息支払によって行う
やりすぎた節税行為を封じる措置というのがあります。

1つ目は、前回取り上げた、過少資本税制
資本に対して不当に過大な利子は費用に入れない、というもの。

2つ目は、移転価格税制
これは過大な利率を制限するもの。

そして3つ目に、2012年税制改正にて新たに導入された、過大支払利子税制

これは、所得金額に対して不当に過大な利子は費用に入れない、というものです。
正式には、「関連者等に係る純支払利子等の課税の特例」といいます。相変わらず長い。

過大支払利子税制は、2013年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
もう適用対象年度が開始している会社も多くありますね。

日本から海外への所得移転を防ぐことが目的なので、国内グループ企業間での支払利子は対象外です。
よって海外に親会社がある、外資系企業は適用の有無をチェックする必要があります。

まず、過大支払利子税制の制限を受けない場合(適用除外)が2つあります。
 ・その事業年度の関連者純支払利子等の額が1千万円以下の場合
 ・その事業年度の関連者純支払利子等の額が、総支払利子等の額の50%以下の場合

 ※関連者支払利子等の額=関連者支払利子等の額の合計額-控除対象受取利子合計額

簡単に言うと、関連者等への支払利子等が年1千万円以下か、
あるいは、
関連者等以外も含めた支払利子等全体額のうちに関連者等の分の占める割合が半分以下なら
まずセーフということです。
(ただし申告書に明細書の添付が必要)

ここでアウトになったら、次の算式により計算した金額が、費用として認められません。

費用否認額=関連者純支払利子等の額-調整所得金額×50%

 ※調整所得金額=当期の所得金額+減価償却費等+関連会社純支払利子等の額
(この合計がマイナスとなる場合は調整所得金額はゼロとされますので、
 関連会社純支払利子等の全額が否認されます)

それでは具体例を。

【その1】所得金額3,000万、減価償却費等500万、関連者純支払利子等の額2,000万
費用否認額=2,000万-(3,000万+500万+2,000万)×50%=△750万 ∴否認額なし

【その2】所得金額1,000万、減価償却費等500万、関連者純支払利子等の額2,000万
費用否認額=2,000万-(1,000万+500万+2,000万)×50%=250万 ∴250万円否認

【その3】所得金額△1,000万、減価償却費等500万、関連者純支払利子等の額2,000万
費用否認額=2,000万-(△1,000万+500万+2,000万)×50%=1,250万 ∴1,250万円否認

やはり恐ろしいのは【その3】のパターンです。
支払利子2,000万のうち、半分以上である1,250万が費用として認められません。
この規定の適用前の所得金額はマイナスだったため、法人税がゼロのはずでしたが、
適用後は△1,000万+1,250万=250万円が所得金額とされ、税務上は利益が出ていることになり、一転して課税されます。

この規定により否認された費用の額を、『超過利子額』といいますが、
翌期以降7年以内に【その1】のパターンのように費用否認額にマイナスが訪れたときに
そのマイナス分を上限に費用として認めてもらえます。

また、この過大支払利子税制による否認額が、過少資本税制による否認額を下回る場合は、
過少資本税制による否認額が採用されます。
会社にとって不利なほうが採用されるというわけです。

国際課税は中々に複雑ですし、税制によって大きく影響が出ます。
世界を股に掛けて、それだけ思い切った節税行為を図る会社や人がたくさんいるのですね。

※外国子会社合算税制等との絡みは割愛しました。

スポンサーリンク


★お読みいただきありがとうございました! ご依頼・ご相談はこちらから↓↓↓お願いいたします。 ※鈴木靖子税理士事務所のHPへとびます。 ------------------